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2006月11月06日
 豊かなオアシスに恵まれた原油の宝庫    (サウジアラビア王国東部州)

 その5 アラビア湾岸    (No. 5 Arabian Gulf_7)            著: 高橋俊二




6. アラビア湾の珊瑚礁

6.1 ポリープと共生藻

6.2 アラビア湾の珊瑚礁

6.3 アラビア湾の珊瑚に棲む生物

6. アラビア湾の珊瑚礁

大洋に照らされた海面下僅か12メートルの珊瑚礁の台地から珊瑚礁の麓の暗く深い海中まで奇妙な形の岩の森が魚の為の隠れ場を作り出している。この岩は石灰岩でポリープ(polyps)と呼ばれる小さな花の様な動物が分子単位で堆積して形成された。ポリープ(polyps)は枝の様な珊瑚の石の内側に閉じこめられて生活する貝や甲殻類(shellfish)から銛打ちカタツムリ(harpoon-throwing snails)、淡く柔らかな色調の珊瑚を噛み砕くオーム魚(pastel-colored coral-crunching parrot fish)まで数百種類の他の動物がやどる棲み家を作りだしている。Page Top

 

6.1 ポリープと共生藻

日の光は珊瑚礁を作る全ての珊瑚類が成長するのに重要な役割を担っている。ポリープ(polyp)の膜の中には微細な光合成する藻がいて、この藻はプランクトンを食べるポリープが発散する炭酸ガスを消化し、ポリープが使える酸素を発散する。藻によって炭酸ガスが急速に回収されるのでポリープは海底に競合する生物よりも早く成長するので、十分なスペースを確保し、急速に石灰石を堆積できる。この様に藻の生長の為の陽光が無いとポリープによる珊瑚礁の形成は行われない。従って、珊瑚礁は太陽の光が透過できる為に十分浅く、澄んだ海中にのみに存在する。 

珊瑚の種類とそれぞれに共生する藻の違いで必要な陽光は異なっている。珊瑚礁を作る多くの種類の珊瑚は深さの層を示している。華やかな珊瑚は海面近くで生長し、光が少なくても成長できる珊瑚程、珊瑚礁の基盤近くの深さで見られる。珊瑚に付随する全ての様々な生き物も又、深さの層を作っている。これらの生き物はそれが付随する珊瑚にしか棲息しないからである。魚、蟹、巻き貝(snails)、ワーム(worms)等は場所的には珊瑚礁全体に広がっている。珊瑚礁は多くの異なる種が同時に同じ場所にいるのを許容し、珊瑚礁の生態系に途方もない多様性を作り出すのに貢献している。Page Top

 

6.2 アラビア湾の珊瑚礁 

珊瑚礁は世界の全ての暖かい海洋に形成される。そこでの状態は海水の塩分濃度は高過ぎず、海水温が一年を通じて余り変化していない。アラビア半島西岸が臨む紅海の珊瑚礁はその多様性と色彩で有名である。その様な珊瑚が成長する理想的な環境はとは程遠い、塩分濃度が高く、浅海のアラビア湾でも大きく健康的な珊瑚礁や珊瑚島は一般的である事が最近分かってきた。(注)

(注)アラムコの科学者達がアラビア湾の非典型的珊瑚礁を研究した成果は285頁におよぶ「アラビア湾西部の小棲息圏(Biotopes of the Western Arabian Gulf)あるいはサウジアラビアの海洋生物と環境(Marine Life and Environment of Saudi Arabia)」にまとめられている。

ポリープによる珊瑚礁の形成はアラビア湾では水深9 mから10 m 位の海中で行われている。特に東部州沿岸のアラビア湾北部では数百の珊瑚礁が数えられ、その殆どは台状の珊瑚礁であり、平らな上部が海底から低潮時の海面の少し下まで隆起している。又、陸岸に接してできた裾礁(キョショウ)(fringing reefs)や幾つかの珊瑚島(coral islands)もある。Page Top

 

6.3 アラビア湾の珊瑚に棲む生物 

珊瑚礁は均一な環境条件を調えているので、そこに棲息する生物の種類は非常に多い。その多様な動植物の関係は複雑であり、それぞれが互いに珊瑚礁の生態系における役割に即した適応と夥しく多様性な特徴で見事な調和を見せている。実際に、珊瑚礁は海中で一番複雑な小棲息圏(biotope)である。 

(注)小棲息圏(biotope)とは生態学用語で特定の生物群集が生存しうる均一な環境をそなえた区域の呼称である。

アラビア湾の不適当な高い塩分濃度や海水温の大きな変化のお陰でここの珊瑚礁は珊瑚とそれが支えている生物の種類も他のどこよりも少ない(注)。従って、その生態系を研究するのは比較的容易であり、学術的には有用である。それでも、アラビア湾では珊瑚礁が他のどの小棲息圏(biotope)よりも二倍以上の異なる種を支えている。珊瑚ポリープ(coral polyp) の種類で石灰に沈殿の仕方は違うし、各々の珊瑚がそれぞれ特有の成長の型や構造を持つ。その形の間や中に棲む生物の多くはそれぞれの同じ様な個々の方法で隠れ場を確保する為に構造的な独自性を発達させてきた。 

(注)太平洋の海洋性珊瑚礁では3,000種を越える生物を支えているが、典型的なアラビア湾の珊瑚礁ではその3分の1から半分の種の棲みかであるに過ぎない。 

例えば枝分かれ珊瑚(branching coral)はその枝に隠れる魚、海老や蟹の棲みかである。塊状の脳の様な珊瑚(massive brain coral)は貝や甲殻類の棲みかである。貝や甲殻類は石灰石に穴を開け、自分達が掘った小さな洞窟を棲みかとする。幾つかのフジツボ等の蔓脚類(barnacle)や蟹類の雌はその中で生長し過ぎ、自ら閉じこめられる事で防衛し、最終的には生きている珊瑚に埋葬されてしまう。珊瑚蟹、棘のある海老や多くの魚の種は無数の引っ込んだ場所(nook)や割れ目に住んでいる。これらは異なった形の珊瑚の種が混ざり合う事で形成され、あでやかな海綿、ホヤ(sea squirt)や海ウチワ(sea fan)も住んでいる。 

その他の動物は珊瑚を食糧として依存している。オーム魚は生きている珊瑚を直接食べている。この為に石灰石の塊に噛みつき、尖った嘴で噛み砕き、細かく白い珊瑚砂を吐き出しながらポリープの生きている皮を消化する。その他の魚の種は珊瑚ポリープの触手(the coral polyps' tentacles)が捕らえた小さな動物性プランクトンを横取りする。更に他に生物も珊瑚礁でその食糧となる餌が生活する為に棲みついている。奇麗な織物の様な文様の巻き貝が魚やその他の活動的な動物を毒矢で射て丸のまま飲み込んでしまう為に徘徊している。尾の両側に外科用メスに似た骨のナイフを持つニザダイ(surgeonfishAcanthuridae)は日に照らされた珊瑚の上に育つ藻を食べる。Page Top

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