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2007530日 著:高橋 俊二

ナジランの伝統工芸

(Traditional Handicrafts of Najran)





 

索引(Index)

前書き(Preface)

1. 台所用品(Kitchenware)

1.1 陶器の鍋(Earthenware Pot)、ブールマ(Burma)

1.2 鞍袋(Saddle Bag)、クルジ(Khurj)

1.3 バン籠(Bread Basket)、ジュナ(Juna)

1.4 コーヒーカップ入れ(Al-Shat)

1.5 多目的バスケット(Motrah)

1.6 木鉢(Tumbler or Qadaha)

1.7 石鉢(Al-Middhan)

1.8 買い物籠(Al-Mizablah)

1.9 紐付き革袋(Al-Qitf)

1.10 飾り紐付き革袋(Al-Ossm)

1.11 濾過装置付きコーヒー沸かし、ダッラ(Dallah)

1.12 焙焼器(Roaster or Mahamas)

1.13 食事用マット(Al-Mihjan)

1.14 香炉(Incense Burner)

1.15 火鉢(Morakkab)

1.16 ピ−ルスコーヒー沸かし(Dalla)

2. 銀製の装飾品(Silver Ornaments)

2.1 耳飾り (Khorous)

2.2 細工された銀製品モウタル(Moutal)

2.3 円筒形胸飾り(Hirz)

2.4 方形胸飾り(Al-Lazam)

2.5 三角形頭飾り(Al-Danaa)

2.6 ボタン穴ネックレッス(Al-AqdoButtonholed Necklace)

2.7 腕輪(Al Shomayliate)

2.8 ベルト(HazamSilver Belt)

2.9頭帯固定環(HalkHeadband Rings)

3. 短剣(Dagger)

3.1 ジャンバイア(Janbayah)

3.1.1 マハライア(Al-Mahalayiah)

3.1.2 ダガー・ケンジャール(Dagger Khenjar)

3.1.3 アダイラ(Al-Adaylah)

3.1.4 アブディ(Al-Abdy)

3.2 ジャンバイア(Janbayah)の部品

3.2.1 (SheathCover)

3.2.2 (Leather)

3.2.3 成形(Molding)

3.2.4 (Knife & Basket)

3.2.5 柄がしら(HandleHead)

3.3 高価なジャンバイア(Janbayah)

3.4 ナイフ(Municipal Knife)

後書き(Postscript)

出所と参照(Source and Reference)

 

前書き(Preface)

 

ナジランの伝統工芸品は首長宮殿(Emirate Palace)とも呼ばれるトルキー マディ宮殿(Turki Al Madi Palace)前のスーク(市場)で訪れる毎にあれこれ買っていたが総括的に何があったかを系統立ててまとめるのは難しい。何か参考になる資料が無いかと思って探していたら、20022月にナジランホリディインのサウジ人ガイドのサイード氏(Mr. Saeed Jumann)から勧められて買った本が私の本棚にあった。この本は1994年にファラフ シバン氏(Mr. Falah Shiban)が出版した「ナジランの遺物と歴史(Najran Archaeology and History)」で、ナジランの伝統工芸に関しては内容的に詳しいので、その中から抜粋して紹介したい。

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1. 台所用品(Kitchenware)

 

   台所用品は一般的にその地の環境で入手できる材料で、使い手の好みに合わせて作られ、その時々の用途に使われている。ナジランには粘土、陶器、石、銅、真鍮、木、羊毛、羊皮、樹皮、麦藁やナツメ椰子の葉で作られた台所用品があり、伝統的な料理を調理するのに使われて来た。
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1.1 陶器の鍋(Earthenware Pot)、ブールマ(Burma)

 

   ブールマは肉を調理するのに使われ、「ブールマで調理された肉は今日使われている鉄製の鍋よりも卓越し、味が良い」と言われている。ブールマには二種類があり、一つは石から作られ、もう一つは粘土から作られている。粘土から作られたタイプ(Earthenware Pot)は古代から知られ、一般に使われてきた。石(Stone Pot)から作られているタイプはそれに比べると新しい。料理の質ではこの二つはタイプに差は無いが、石で作られたブールマは内容物を暖かく保てる特徴があるので今日では好まれている。ブールマには胴体の外側に熱くても運べるように付属物が付いている。

粘土で作られたブールマの平均価格はSR.30からSR.50であるが石で作られたブールマの平均価格はSR.90からSR.150である。価格が違うのはその大きさによる。

 

(注)サウジリアルSR 3.751米ドルに相当する。
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1.2 鞍袋(Saddle Bag)、クルジ(Khurj or Kharj)

 

   クルジはポケットやブリーフケースのように作られ、コーヒー、小麦粉のような貴重な物を入れるのに使われた。これは駱駝、馬の鞍や屋内の台に吊り下げられていた。

 

クルジは持ち主にとってはほとんど価値が無いが、昔は高価であった。クルジは羊や山羊の毛で出来ている。毛は紡いで様々な色に染められ、明るい色の小さなカーペットのように織られる。それから垂れ下がった色紐で飾られる。現在のクルジの値段はSR.150からSR.250である。

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1.3
パン籠(Bread Basket)、ジュナ(Juna)

 

   ジュナはバンを暖かく、柔らく保つ為に使われる。これはハスフ(Khasf)或いはナマス(Namas)と呼ばれる木の枝で作られる。ハスフ(Khasf)或いはナマス(Namas)は川の谷々や溜まり水の両岸に豊富に見つかる。この木の高さは1m以上あり、葉の無い多くの枝を付ける。これらの枝を刈り取り、乾燥させて、長い間、曲がり易くなるまで水に漬けておく。枝はより糸に成るように縦に切り分けら、異なった色に塗られる。消耗やすり切れるのを防ぐ為に底だけは皮製で作られている。ジュナの高さは平均約30cmであるが、それよりも大きなサイズのものもある。ジュバの価格は平均SR.25からSR.40である。

 

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1.4 コーヒーカップ入れ(Al-Shat)

 

   シャト(Al-Shat)は休憩の間、コーヒーカップを格納するために使われる。これもハスフ(Khasf)或いはナマス(Namas)と呼ばれる枝から作られ、ピラミッド型をしており、そこには皮が張ってある。皮の紐が外側に付けられ一方の端は底近くに取り付けられ、もう一方の端は蓋を本体に付ける為に蓋に取り付けられている。こうして蓋が落ちるのを防ぎ、カップが壊れない様にシャトを保護している。銅で円筒形に作られた他のタイプのシャトもある。シャトの値段はSR.15からSR.20である。

 

 

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1.5
多目的バスケット(Motrah)

 

    モトラ(Motrah)はパン、デイツ、干しぶどう等を保管する多目的に使われる。これもナマス(Namas)と呼ばれる枝から作られる。

 

 

多くの種類やサイズがあり、色も様々にかわいらしい。今では装飾目的で非常に小さなサイズも作られている。デイツはしばしば、モトラに入れられコーヒーと共に客に饗される。モトラと似たもう一つの種類ダラジャ(Al-Daraja)があるが、大きなサイズに限られ、女性が貴重品を入れるのに使われ、親戚や友人を訪ねるときには頭に載せて運ぶ。
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1.6 木鉢(Tumbler or Qadaha)

 

   タンブラー(Tumbler or Qadaha)又はコップ(Hasan)と呼ばれる木製のタンブラーの外側には追加のハンドルが取り付けられ、皮紐で飾られている。通常、肉スープを入れるのに使われ、現在でも普及しており、肉スープを入れるのに最も優れた容器であると評価している人達も居る。これは特にタマリスク(Tamarisk)等の幹で作られている。平均価格はSR.40からSR.60である。

 

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1.7
石鉢(Al-Middhan)

 

 

この台所用品は仕上げられた石で作られ、外側にハンドルと呼ばれる付属物が付けられている。ミッザンは中の食物を出来るだけ長い間、暖かく保つのに使われる台所用品であり、特にラガシュ(Raqash)と呼ばれる肉スープを混ぜた食物を入れるのに使われる。ラガシュはナジランでは人気のある食事であり、ミッザンはピラミッドの様な形の蓋をかけられるので、ラガシュを何時でも何処へでも運んで行ける。平均価格はSR.150からSR.300である。
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1.8 買い物籠(Al-Mizablah)

 

   ミザブラは様々な物を運ぶバスケットであり、主に買い物に使われる。アル ミザブラは大きな台所用品なので家の中では壁からぶら下げてある。これには二つの吊り手があり、干して水に漬けたナツメ椰子の葉で作られている。平均価格はSR.30からSR.40である。

 

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1.9 紐付き革袋(Qitf)

 

 

   キトフ(Qitf)は革製の台所用品でその口は堅く閉められるように皮の紐で閉じられる。この紐の先端には小さな皮片が飾りとして付けられている。これとは別に吊り下げる為の紐もついている。これはしばしばコーヒーや貴重品を入れるのに使われる。平均的な値段はSR.30からSR.50である。
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1.10 飾り紐付き革袋(Al-Ossm)

 

   オッスムはキトフに似た革製の台所用品であるが、その底には多くの革紐が付けられ、その口を固く締める紐がつけられて無いのが違う。これはしばしば小麦を入れるのに使われる。この平均価格はSR.20からSR.40である。

 

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1.11 濾過装置付きコーヒー沸かし、ダッラ(Dallah)

 

 

   濾過装置付きコーヒー沸かし(Percolator)はアラビアコーヒーの象徴であり、アラブ人のどの家にもある台所用品である。ダッラはとても誇りにし、誉れにされており、来客にダッラで淹れたコーヒーを饗するのは来客に対する敬意であると考えられている。更に、プラスティクやガラスで作られたアラビア風のダッラは飾りとして客間の前に置かれる。二つの大きさのダッラがあり、一つは小さく、一つは大きい。非常に高価な材料で作られたダッラもあり、その値段はタイプによって異なる。
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1.12 焙焼器(Roaster or Mahamas)

 

   くぼんだ鉄製の台所用品がアラビアコーヒーを淹れる豆をあぶるのに使われる。このロースターには豆を焙るのを調節し、焙り手が火から遠ざかれる為に長い柄が付いている。ロースターは付属の鉄製のサジが付いており、これでロースターの中の豆をかき混ぜる。平均的な価格はSR.40からSR.50である。

 

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1.13 食事用マット(Al-Mihjan)

 

 

  ミハジャン(Al-Mihjan)は床に直接敷いて食卓に使われる円形の茣蓙であり、ナツメ椰子の葉で作られ、様々なサイズがある。これにはナツメ椰子の幹を被うナツメ繊維で作られた握り手が付けられている。平均的な価格はSR.30からSR.50である。
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1.14 香炉(Incense Burner)

 

   ナジランの香炉(Censer)は粘土から出来ている。粘土は              煙突に成型された後、補強し、簡単に壊れないように焼かれる。これも台所用品の一つで、今でも使われている。地方的に製造された香炉があり、煙突の中に点火されると液体になり、現在、香炉として使われている反対側から排出物を簡単に取り出せる。これらは火に対して衣服を保つ事で区別される。それは近代的な香炉とは反対に被われた円蓋を作り出す為である。これらは通常、幾つかの異なった色と形をしている。平均的な価格はSR.10からSR.15である。

 

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1.15 火鉢(Morakkab)

 

 

   モラッカブは内側に冬の屋内で暖を取る為に火のついた炭を入れる台所用品であり、アラビアの火鉢である。モラッカブは暖を取るだけでは無く、コーヒー沸かし器をこの中に入れ出来るだけ長く、熱く保つ為にも使われる。これは殆ど粘土(焼いた土)か、鉄か、銅で作られている。どの材料を使っても目的は達せられるが壊れやすい点を除けば粘土が価格的に安い。平均的な価格はSR.30からSR.50である。
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1.16 ピ−ルスコーヒー沸かし(Dalla)

 

   ダッラにはしばしば真鍮で作られ、特徴的な形をしている種類がある。これはピ−ルス(peels)と呼ばれるタイプのコーヒーを飲むのに使われる。コーヒー豆を被う薄い膜を集めて乾燥させたのがピールスである。ピールスの色はこの容器の中で沸騰させると紅くなる。高温で飲まれるので他に飲料水等が無くても咽喉の渇きは十分に癒せる飲み物である。

 

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2. 銀製の装飾品(Silver Ornaments)

 

古代からナジランでは銀製装飾品の価値は非常に高かった。最高に美しい装飾品を作る為に装飾師が互いに争い合ったその加工技術は現在でも保存する価値のある立派な芸術である。その時代の銀製の装飾品は今日の金やダイヤモンドの装飾品と同じ様に重要で金融的価値に加えて非物質的な価値も持っていた。女性は銀製装飾品が飾りに使うと共に、結納の贈り物として結婚を受け入れる条件に考えていた。今では同じ様な使われ方をしている金製装飾品に代わられて、銀製装飾品は昔と較べると相当に低い価格で売られている。今でも銀製装飾品は財産、飾りやおみやげとして加工されているが、昔作られた製品は汚れが混じらず、他の金属も混ぜられて居ないので今の製品よりも値段が高い。
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2.1 耳飾り(Khorous)

 

   アラビア世界での耳飾りは耳に付ける金製或いは銀製の垂れ飾りの付いた輪を意味している。コロウス(Khorous)は複数のコルスで現在では女性の耳のペンダント付きイヤリングと呼ばれている。二つのタイプのイヤリングがあり、一つは長く、小さな熊手の様な形をして、部品は互いに付着し、その長さは約20cmで幅は4cmである。このタイプのイアヤリングの幾つかは耳たぶを飾り、縦の線か鎖で作られているものもある。ペンダント付きのイヤリングは通常は耳を飾るために髪飾りからぶら下げられる。このタイプの値段はSR.90からSR.150である。もう一つのタイプのイヤリングはオロウジ(olouj)と呼ばれ、イヤリングの一種で、通常、耳から吊される。この二番目のタイプのイアヤリングは円い形をしている。下の半分は或る程度、幅が広く、銀飾りや小さな穀物の様な飾りを付けているが、上の半分は細く、簡単に耳の下に開けた穴に入れられる。二番目のタイプは値段や価格は安く。SR.40からSR.60位である。

 

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2.2 細工された銀製品モウタル(Moutal)

 

   昔は前腕に細工した銀片を全く付けなかったり、僅か二つしか付けてなかったりする女性を見るのはまれであった。モウタル(Moutal)は半円形の銀片で、女性が前腕に飾る。細工された銀のサイズは大、中、小と異なっていた。これは細工された銀と呼ばれ、足首飾り、ハダウィド(Hadawid)と呼ばれた。これは女性が結婚を承諾する条件として男に提供を求める一番重要な銀片の一つであった。そのねじ曲げられた形から「締め付け」と呼ぶ人達も居る。その一方の端には付属物が付き、前腕にとめる為に本体よりも少し大きなサイズに成っている。この平均価格はSR.150からSR.250である。

 

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2.3 円筒形胸飾り(Hirz)

 

   ヒルズ(Hirz)は円筒形の銀の筒でたくさんの銀の鎖をぶら下げており、幾つかの銀の円形片で飾られた紐を吊している。これらの中には多くの球の様な色の付いたプラスチックの粒が入っている。これは首に掛けて胸の上にぶら下げられる。この長さは15cmである。もう一つのタイプは円形の赤いプラスティクで飾られた方形の箱である。平均的な価格はSR.80からSR.120である。

 

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2.4
方形胸飾り(Al-Lazam)

 

 

   通常、ラザム(Al-Lazam)は方形の飾りのある銀製の五つの部品で構成され、五つの部品は互いに円いビーズに入った紐で結ばれている。内側の三つの部品の下側にはそれぞれ円筒形の部品がぶら下げられており、その円筒形からは更に多くの短い鎖がぶら下げられている。これは胸に吊される。ラザムに似たもう一つのタイプはラッバ(Al-Labba)と呼ばれ、少し小さめで胸にくくりつけられ、それから幾つかの円筒形がぶら下げられる。平均な価格はSR.200からSR.500である。
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2.5 三角形頭飾り(Al-Danaa)

 

   ダナア(Al-Danaa)は矩形をした銀の部品でその真ん中部分は赤い円い突起物で飾られている。それからは丸い飾りを付けた鎖がブル下がっている。女性はダナアを頭に被ったショールの上から耳の位置に来るように吊り下げる。平均的な価格はSR.40からSR.60である。

 

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2.6
ボタン穴ネックレッス(Al-AqdoButtonholed Necklace)

 

   これはアラビアで知られた名前はあるが、これは「ボタン穴を付けた」と呼ばれている。その訳はそれを飾っている銀の大きな部品がボタン穴を付けた様に小さな部品に溶接されており、それが取り扱いの位置を定める場所である。ネクレッスには部品を配分する場所がある。通常は銀製の幾つかの鎖で飾られたボタンの中にもう一つのバタン穴がある。これらの鎖は先端が銀製のビーズで飾られていた。女性はこれを自分の胸に吊していた。平均的な価格はSR.150からSR.200である。

 

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2.7 腕輪(Al Shomayliate)

 

   

これは銀の円形の部品で作られ、女性はこれを前腕に付ける。その幅は4cmで爪を付けたとても美しい形をしている。爪が除かれた時にはこの銀製品は開く。この銀製品を付けた後は爪が戻され固く閉められる。もう一つのタイプがショマイリアトで幅が多少狭く、突出したピラミッド型の付属物をその外側の表面に持っている。価格は前者が平均SR.150からSR.200であり、後者が平均SR.100からSR.120である。
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2.8 ベルト(HazamSilver Belt)

 

   言語ではベルトは腰を閉める物を意味する。銀製のベルトは古代の女性の身分を区別した最も重要な装飾品だった。銀製のベルトの製作には根気強い努力と細心の注意を必要とする。殆どの女性が銀製のベルト今でも求め、折に触れて身に着けているのは、単に愛らしく魅力的な形をしてばかりでは無く、今も昔も、もっとも高価な銀細工の一つであるからだ。その平均的価格はSR.700からSR.1,200もする。

 

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2.9
頭帯固定環(HalkHeadband Rings)

 

リングには目立った赤い突起(lobe)が付いており、基盤と共に卵形をしており、そのトップの中心には小さな突出した銀製の粒が付いている。それの五、六個が一緒になって紐を束ね、バンドにして、女性が頭に巻く。これは黒い色で、長い毛糸の紐から作られている。銀細工が時々、これらのリングの間に見られ、包帯をしたと呼ばれ、各々を互いに固定して、特徴のある形を作っている。この平均的な価格はSR.10からSR.15である。

 

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3. 短剣(Dagger)

 

   ダガー(Dagger)は特殊な形をした短剣で、特徴ある鞘に入れ、背中まで廻したベルト等で腰に帯びている。ダガーを帯びるのは父や祖父から継承された伝統的な習慣であり、ダガーは個人的な男らしさと力を示している。伝統的な価値があり、価格は細工の品質や飾られている金銀部品次第で数万サウジリアルもする。代々受け継がれて来ているダガーには最高級品が多い。
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3.1 ジャンバイア(Janbayah)

 

   ジャンバイアの入手と帯刀はアラビア半島南部の多くの男達、特にナジランの男達にとっては、父や祖父から受け継がれて来た古い習慣で歴史の一部でもあり、いまだに、有形、無形の価値があり、無視する事は出来ない。ジャンバイアを帯刀する事は個人的な男らしさと力を示す習慣の一つと考えられており、ナジランの男達はその獲得には執念を持ち、ジャンバイアを所有してない男は殆ど居ない。昔は「ジャンバイアを持たずに歩いたり、人にあったりする事は出来ない」と考えられていた。今でもジャンバイアは式典などには頻繁に帯同され、ポプラーなダンスの主要な要素である

 

ジャンバイアの中には2万サウジリアルを越える値段のする物もあるが、多くはそれ以下で細工や装飾次第ではあるが、500サウジリアル越えるジャンバイアは少なかった。今日では反対に細工や装飾等の要素がジャンバイヤを高価にしている。ジャンバイアは時々、ダガー・ケンジャール(Dagger "Khenjjar)と呼ばれ、多くの人々がこれ以外の名前を知らない程、ジャンバイアはこの名前で有名である。ダガーが四つのタイプのジャンバイアの一つに過ぎないけれども、ジャンバイアはこの名前で有名である。四つのタイプのジャンバイアとは

 

a) マハライア(Al-Mahalayiah)

b) ケンジャール(DaggerKhenjar)

c)  アダイア(Al-Adayiah)

d) アブディ(Al-Abdy)

 

を指している。

    

   ジャンバイアの四つのタイプは次の通りである。

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3.1.1 マハライア(Al-Mahalayiah)

 

   マハライアは一定の形をしていて他の皮部品をつけた皮で被われ、装飾の為に色が付けられている。その上に意匠された幾つかの線が描かれている。それに加えて三、四個越えない範囲で銀製の特別な部品が付けられている。

 

   1. 主飾り(Staple)

   2. マッドハク(Maddhak)

   3. 花(Flower)

   4. サラス(Salas)

 

 

   花が飾られている部品は赤いビロード(velvet)で作られ、赤い突起(lobe)が主飾りの上になければならない。マハライアの物質的価値は銀製の部品の多さや製作の品質次第では無く、ナイフと柄の品質次第で決まる。マハライアは父から代々受け継がれるので極端に高価だろうと思われる。
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3.1.2 ダガー・ケンジャール(Dagger Khenjar)

 

   ダガー・ケンジャール(Dagger Khenjar)はケンジャール(Al Khenjar)とも呼ばれる。これも又、特徴のある、決まった形をしている。全ての部品が隣り合う他の部品と調和する様に注意深く作られ、美しい銀製の部品で完全に被われて居ることで特徴付けられている。実際にジャンバイア(Janbayah)の中ではケンジャールの形が一番美しく、ダッガーとして一番有名である。

 

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3.1.3 アダイラ(Al-Adaylah)

 

   アダイラ(Al-Adaylah)は新しく近代的なタイプのジャンバイア(Janbayah)である。飾りとしての幾つかの小さな線や折り目を除いてこれは殆ど銀製の部品や添え物を付けられていない。従って、これ製作は比較的に簡単である。アダイラはマハライア(Al-Mahalayiah)やケンジャール(Khenjar)の種類に属し、一般的な形や皮だけで作った鞘の作り方等、これらに類似している。

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3.1.4 アブディ(Al-Abdy)

 

   アブディ(Al-Abdy)は製作としては一番簡単なタイプであり、銀製の部品は使われていない。これをジャンバイア(Janbayah)の一種だと考える人達も居るし、そうでは無い人達もいる。これはバナナに似た形に特徴がある新しい近代的なタイプである。これは単に皮で被われ、装飾は無く、価格的には一番安い。

 

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3.2 ジャンバイア(Janbayah)の部品

 

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3.2.1 (SheathCover)

 

(SheathCover)はジャンバイアの内部の主要部品であって、木材で作られている。たとえそれが壊れやすく、割れやすいタイプであっても木材が特定のタイプである必要は無い。それを外から破壊から保護する別の鞘があるのでこれはあまり効果的では無いが、一番重要なのはこれがジャンバイアの知られている一般的な形をしている事にある。マハライア(Al-Mahalayiah)、ケンジャール(Al-Khenjar)およびアダイア(Al-Adayiah)ではその形は殆ど変わらないが、アブディ(Al-Abdy)は異なっている。そうであっても鞘の中の空洞が全てのタイプでナイフの入り口になっている。
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3.2.2 (Leather)

 

   木製の鞘が完成すると皮が巻かれる。皮が牛でも羊でも山羊でも何も変わらないが、皮は清潔で薄くなければならない。鞘は通常、赤を主体とした色で塗られ飾り付けられる。これはマハライア(Al-Mahalayiah)、アダイア(Al-Adayiah) およびアブディ(Al-Abdy)では同じであるが、 ダガー・ケンジャール(Dagger Al-Khenjar)では全ての部品を含み最後に銀で被われるので皮の変わりに布が使われる。それから皮の部品が美しさや折り目を付ける為に皮に取り付けられる。時には飾りとして線が色で描かれる。

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3.2.3 成形(Molding)

 

   ジャンバイア(Janbayah)を外から被う銀である。マハライア(Al-Mahalayiah)のその形はダガー・ケンジャール(Dagger Al-Khenjar)のとは異なる。マハライアは銀製の多くの部品は付けられて居ないが、ダガーは完全に銀で被われている。しかし、どちらの場合も、それぞれ独特の特徴ある形をしている。銀はダガーの形の重要な部分であり、銀無しではダガーと呼ぶ事は出来ない。

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3.2.4 (Knife & Basket)

 

   刃(Knife又はBasket)はジャンバイア(Janbayah)の鉄製の部分である。その価値は鉄によって異なっている。一番高価なタイプは鉄の中では一番強いスチールである。ジャンバイア全てのタイプの中で刃(Knife)だけが変わらない或る形をしている。通常は真ん中にちょっとした突き出しがある。どの様な種類の鉄が使われていても関係者がそれを取り扱うのでそれは清潔で輝いており、この分野に経験が無い限りは誰も品質の善し悪しを判断出来ない。もし、鉄がスチールで古ければ値段は高い。

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3.2.5 柄がしら(HandleHead)

 

柄がしら(HandleHead)はジャンバイア(Janbayah)の上の部分で刃(Knife)に強く固定されている。通常はそれが製造された材料の種類によってジャンバイアの値段が上下する主要な要素である。これはジラフ(giraffe)、角或いはプラスチックで作られている。稀少動物で国際的に狩りの禁止されているサイの角で作られているのでジラフが一番高価である。しかしながら、通常は牛の角から作られるので角の大きさが値段を決める二番目の要素である。プラスティクは現在では知られているが、これは強度があり、加工しやすく、値段も安い。柄がしらはジャンバイアの全てのタイプで或る形をしている。違いは殆ど無く、これはギラギラ輝いて織り、荘厳な形の愛らしく鮮やかな色になる様に手入れされている。時には金銀の円い部品で装飾されている。

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3.3 高価なジャンバイア(Janbayah)

 

   高価なジャンバイアは次の様な要素を持っている。

 

   1. 柄がしらはジラフ(giraffe)製(サイの角)である。

   2. ナイフはスチールで作られている。それが古ければもっと高価である。

   3. 銀の成形、多くのそして古い銀の部品が多いので高価である。

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3.4 ナイフ(Municipal Knife)

 

 

   ナイフはこの地方でも製造されており、伝統的な形にもかかわらず、今でも多くの人の興味と注意を喚起している。これは鉄製で、片刃である。柄がしらは牛の角か強化プラスチックで作られており、柄にそって縦方向に幾つかの銀製の装飾が施されている。人々が注目し、この限定されたナイフの必要性にもかかわらず、値段はSR.20からSR.50と手頃である。

 

   これは刃(blade)と呼ばれ、通常は特に鞘は無い。しかしながら、常にこのナイフを携帯したいと思っている人達は必要に応じてジャンバイアの後に差す、ナイフが必要な場合はこれを使って、ジャンバイアを常に清潔に保っている。

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後書き(Postscript)

 

   この本は前書きが少し気負い過ぎていたので必ずしも重視して来なかったが、民族工芸の観点からは良くまとまっている。翻訳したかったが作者と連絡が取れなかったので、ここでは抄訳に止めた。
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出所と参照(Source and Reference)

 

ナジランの遺物と歴史(Najran Archaeology and History)

ファラフ シバン氏(Falah Shiban)1994

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