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豊かなオアシスに恵まれた原油の宝庫 (サウジアラビア王国東部州) その1 東部州の紹介 (Vo.1 Introduction of East Province) 著: 高橋俊二 |
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東部州を紹介している文献としてはアラムコ ワールドに紹介された記述等、数は少なくは無いが、包括的な著述としてはウィリアム ファセイ氏(William Face)の「東部州物語」が唯一と言っても過言ではない。ウィリアム ファセイ氏の記述は同氏の著作「古都リヤド」も同様であるが広範囲にわたってその土地を紹介している。東部州の考古学時代の紹介にはジェオッフレイ バイッビ(Geoffrey Bibby)の報告書等もあるし、サウジ文部省考古博物館庁の機関紙アトラル(ATLAL)に掲載されている発掘報告書も少なくない。しかしながらウィリアム ファセイ氏が特に秀逸なのはサウジアラビアで出版している書籍で殆んど触れられていない考古学的時代とイスラーム発祥の間の歴史を詳しく述べている事であり、私にとっては非常に重要な参考書となっている。私の友人でマダインサレーのガイドをしているパトリック ピエラード氏(Patrick Pierard)は「カイバールのユダヤ人遺跡等について説明しようとすると彼のサウジの雇い主(Bin Zaid)がサウジにユダヤ教徒が存在した事さえ否定するので困っている」と嘆いて居た。実際に、昨今の原理主義の台頭でアラビアにイスラーム以外の宗教が存在していた事を論ずるのを控えた方が良いとの風潮はあり、禁止されている訳では無いが、出版物以外にその様な資料について質問したり、手に入れたりするのは難しかった。従って、ウィリアム ファセイ氏と同氏に資料を提供したり、この本をサウジ国内で販売したりするサウジの学究の努力に感謝しつつ、「東部州物語」、特にその歴史に関する章のの抄訳を中心にここに東部州の概要を紹介した。次回からは原油の宝庫、北部(古代シルクロード交易路)、中部(伝統的なオアシス農業と近代的化)およびアラビア湾岸の4部に分け、少し詳しく紹介させて戴きたい。 又、東部州の海岸線の最北端のクウェイト国境のアル-カフジには私が40年近くお世話になったアラビア石油株式会社のアラビア鉱業所があり、青年時代から長く過ごし、生産設備の増強や操業に携わり、1990年のクウィエト危機、1991年1月17日の爆撃の間もそこで過ごし、戦後の油煙と煤に包まれ、灰色の中に白い炎が揺らめく地獄絵の様な光景の中、復旧作業も行った。自分達の場所との思いが深かったが、利権協定失効した後は驚くほどの速さで完全にサウジおよびクウェイトの所有になり、今では我々に取って、第二の故郷であったカフジは砂上の楼閣の様に消えてしまっている。このカフジに関しての紹介はアラビア石油株式会社関連で詳しい書物があるので空白地帯沙漠同様に割愛させて戴きたい。
Sir Norman Anderson et all, The Kingdom of Saudi Arabia、Rev. 9、London & New Jersey, Stacey International, 1993 William Facey, The Story of the Eastern Province, Stacey International, 1994 Arthur P. Clark et all, Saudi Aramco and its World (Revised Edition), ARAMCO Service Company, 1995 高橋俊二、空白地帯と呼ばれる沙漠ルブ’アル カリ(Rub' Al Khali) 2004年6月 JETROリヤド事務所ホームページ情報交差点 Arab News, Riyadh, 12 May 2005
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