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2006月11月06日
 豊かなオアシスに恵まれた原油の宝庫    (サウジアラビア王国東部州)

 その5 アラビア湾岸    (Vo.5 Arabian Gulf_2)            著: 高橋俊二





  
1. アラビア湾の形成と海象
  
   1.1 アラビア湾の形成
  
   1.2 アラビア湾の海
  
  



1.
アラビア湾の形成と海象

1.1 アラビア湾の形成

今日知られているアラビア湾が出現する前の数百万年の間、東アラビアやチグリス・ユーラテス河(Tigris-Euphrates)を含む盆地は浅い海に覆われていた。2,500万年前から1,200万年前の中新世(Miocene)の間に紅海地溝帯が開くに連れてアラビア半島はゆっくりと東へと揺れ動き続けた。 

涸れ谷アル ミヤー(Wadi al-Miyah)にあるサッラール(Sarrar) ()の調査では1,700万年前頃に豊かな自然環境が存在して居た事が分かった。今日では海岸から100 kmも離れているけれどもこれは海岸河口域であった。暑く湿った熱帯性気候でマングローブが繁茂し、沈泥平地(mud-flat)、潟(lagoon)、低湿地(swamp)があった。椰子に縁取りされた流れは西側のもっと高い土地から流れて来た。ここでは草地が古代種のガゼル(gazelle)、キリン(giraffe)、齧歯動物(rodent)や兎(rabbit)を支えていた。マストドン(mastodon)やサイ(rhinoceros)が大草原(savannah)を歩き回り、現在の類人猿(ape)の祖先であるドリオピセカス(dryopithecus)が森林に住んでいた。 

(注)サッラール(Sarrar)はサジ(Thaj)の西に位置している。 

500万年前に海が今日サッマン崖地(Summan escarpment)と呼ばれている崖を形作り、その後に後退して行った。この鮮新世(Pliocene)500 - 160万年前)中頃の300万年前にアラビア半島での最後の地殻変動が始まり、ザグロス山脈(Zagros)を現在の標高に押し上げ、圧縮の力が堆積層に南北方向の緩やかな平行した一連の褶曲を作りだした()。それと共に半島の西から東への傾きを更に増大させ、東側は海面下に沈み、今日のアラビア湾を生んだ。

(注)この時期に形成された褶曲が後に世界で最も豊かな油田地帯の貯油構造と成った。

同じ300万年前からの200万年の間、アラビア半島では大量に雨が降った。著しく雨の多い時代が続き、涸れ谷(wadi)水系を作り出し、約160万年前に始まった更新世(Pleistocene)となった。今日の世界最大級の河川に匹敵する涸れ谷ドワシール(Dawasir)、涸れ谷ニサア(Wadi Nisah)/涸れ谷サバア(Wadi as Sahba)および涸れ谷ルマー((Wadi Rumah)/ 涸れ谷バティン (Wadi Batin) の三つの河川が西側の山脈を浸食しながら東へ半島を横切って流れ、アラビア湾に注ぎ、それぞれが流砂帯ウッム アル サミン(Umm al Samin)(毒の母)、含塩低地サブハ マッティ(Sabkha Matti)および礫平原ディブディバア(Dibdibah)を今日に残している。 

更新世(Pleistocene)は氷河時代の始まった世であり、二十回もの極端に寒い気候と温暖な気候が繰り返され、この氷河期に極地の万年氷が発達し、その為に世界的に海面が下った。12万年前の最後の間氷期から寒冷化する気候が氷河期の最盛期である紀元前18,000年まで続いた。この氷河期にはアラビア湾の海面の着実に下降し、アラビア湾盆地を全て干上がらせるまで海面が約100m或いはそれ以上に下降した。アラビア湾の海底にはチグリス・ユーフラテス河(Tigris River & Euphrates River)が潟(lagoon)や沼沢地帯(marsh)を伴い1,000kmもの長い谷となって延びて来て、その河口はホルムズ海峡(Strait of Hormuz)に達していた。万年氷が溶けるに連れて、アラビア湾は再び海水で満たされ、紀元前6,000には現在の海面に達した。紀元前4,000年には現在の海面よりも約2m上昇し、その後ゆっくりと後退して、紀元前3,000年頃にアラビア湾は現在の水深と形になった。Page Top
 



1.2. アラビア湾の海象 

アラビア湾の海象は世界の多くの海よりも浅く、暖かく、遙かに塩分が濃く、孤立している。アラビア湾はそれ自身、殆ど完全に閉鎖された延長1,000km、幅300kmで平均水深がたった35mの浅海域である。これは世界で最もプランクトンを発生させる水域である一方で、最も脆弱で傷つきやすい海洋性の生態系の1つと見なされてもいる。その低い潮汐による水の入れ替えがその水をインド洋へ殆ど排出せず、インド洋との海水の入れ替えの可能性を殆ど無くしている。 

12月から2月までの冬の月には気温は殆ど0まで下がる。一年のこの時期にはこの地方でシャマル(shamal)と呼ばれる強い北西風が吹き、雨と雷を伴うのが特徴的である。一方、夏の月には雨や風は無いが、45から50まで上がる気温に特徴つけられる。水面の温度は一日の間に際だって変化し、季節毎にも10から35までの間で変化する。アラビア湾の海流は全般的に反時計回りに流れ、イラン側の海岸に沿って西へながれ、クウェイト領やサウジアラビア領のアラビア湾西岸に沿って南下する。潮位はサウジアラビアで1mであるが湾の奥のクウェイトでは3.5mから4mにもなる。Page Top


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